ビル売却の注意点 ~共有名義のビルのリスク~
小規模ビルに意外と多いケースが、1物件を複数人で所有している共有名義の物件です。
理由としては、相続を原因として所有者が複数人に相続されたことと考えられます。
このケース、結構な数が散見されるのですが、1物件を共有名義とするリスクとデメリットを正確に把握してますか?
今回は、「共有名義のビルのリスクとデメリット」についてのコラムです。
ビル売却の注意点 共有名義のビルのリスク その1 概要
相続で図らずもビルの所有者の一人となったあなたは、共有名義についてなんら抵抗やリスクを感じていないのではないでしょうか?
「共有」という響きは流行りのシェアリングエコノミーっぽさがあり、なんだか時代の最先端、仲睦まじさを彷彿させますが、不動産の共有ほどリスクとデメリットの塊はありません。
なんでこんな制度があるのかと思うほどです。
もしかしたら悪徳不動産屋のためにできた制度なのかもしれませんねえ。
共有名義の最大のリスクは、共有名義人の全員の合意がなければ売却できない、ということにつきます。
ここで、ほんとうか?と疑問を持ったあなたは鋭いです。
大変に重要な論点なので深く正確に解説します。上記における「売却」とは正確には、不動産(所有権)についてです。
あなたの持分はあなた単独の意志決定で売却できます。
しかしながら持分売却はデメリットだらけです。
以下具体例で説明します。
ビル売却の注意点 共有名義のビルのリスク その2 具体例①
A子、B子、C子の3人で仲良く被相続人が所有していた賃貸ビルを相続しました。
他に財産がなかったため、A子、B子、C子は仲良く各1/3の持分での共有名義としました。
さて、共有名義で相続し、今までは月々の賃料収入を仲良く3等分していましたが、ある日、A子は新車が欲しくなりましたが現金がありません。
高齢のため、ローンも組めません。
そこで泣く泣くビルの持分を売却することにしました。
A子は不動産屋に相談したところ、持ちビルの時価は1億5000万円だと理解しました。
計算の早いA子は、自分の持分は5000万円や、これはベントレー買えるわ~、と一瞬にしてホクホク顔になりました。
しかし、不動産屋の話をよくよく聞くと、共有名義の持分は単純に物件価格を名義人の数(持分割合)で按分した価格にはならない、と言われました。
A子はとんだ早とちりでした。
目が¥マークになっているA子は我慢できません。
矢継ぎ早に不動産屋に聞きます。
一体いくらで売れるのかしら?
若干困惑気味の不動産屋は言います。
ん~、そ~ですねえ、いいとこ物件価格の8掛けかなあ~。繰り返しますがいいとこですよ、いいとこ。
A子は青ざめます。
少しは現金も残しておきたいし、ベントレーは無理か~、ベンツかBMで我慢するか~と車種を変更します。
実は不動産屋の話には続きがありました。
A子さん、申し上げ難いんだけど、さっきの売却価格はいいとこなんですよ。よっぽどの人気物件でもないと、共有持分は不人気なので高く売れないんですよね~。
A子は青ざめます。
またしても車種変更の胸騒ぎを覚えます。
固唾をのんで見守るA子を尻目に不動産屋は言い難そうに続けます。
直ぐに売却したいなら、物件価格の2掛けかなあ~。
どんどん計算スピードが上がるA子は瞬時に数字をはじき出します。
え?1000万円ってこと?
これではせいぜいレクサスです(トヨタさん申し訳ないです)。しかもグレード低めの。LSは買えないですね。
さあ、どうして共有持分はこんない安くしか売れないのでしょうか?
以下で理由を説明します。
ビル売却の注意点 共有名義のビルのリスク その3 具体例②
共有持分は区分所有権と違い、不動産に対する完全な権利ではないのです。
共有持分の相場はあってないようなものなので、一概に完全所有権の〇割とは言えないのですが、感覚値としては時価の7~8割です。
酷い場合は2割程度なんてこともあるようです。
なぜかというと、理由は大別して2点あります。
1点目は非常にロジカルなのですが、単純に完全所有権と比べて共有者全員の合意がなかれば物件が売却できないなど権利が制限されていることです。
共有名義の場合、物件の売却や建物の増改築といったいわゆる変更行為は単独ではできず、共有者全員の合意がないとできないのです。
修繕などの保存行為は単独でできますが、賃貸などの管理行為は単独ではできず、持分の過半数の同意が必要になります。
2点目は1点目の理由からマーケットが小さいことからも一般人が購入する可能性は著しく低く、不動産屋や投資家などのプロしか買わないからです。
プロは足元を見ます。
買いたたきに来ます。
高くは買ってくれないのです。
えげつないですねえ、もったいないですねえ。
でもこれが現実なんです。
共有持分を一番高く買ってくれるのは、他の共有名義人です。
当たり前ですよね。
目指せ単独名義ですから。
ですので、高く売りたい場合には、まず他の共有者に買わない?と声をかけましょう。
ただし、相続が原因の共有名義人は親族となり、相続した時点で共有名義となったことから推察すると、持分を買い取る現金を持っている可能性が低いこと、現金を持っていても他の持分を欲していない可能性が高いことから過度の期待は禁物です。
ビル売却の注意点 共有名義のビルのリスク その3 具体例③
上述より、共有持分を売却する場合は物件を売却する場合と比べて、大きく価格に乖離が発生することを理解して頂けたのではないでしょうか。
さらに、持分が親族でなない第三者に譲渡された場合、ことはよりややっこしくなります。
本件について話をする、いや、連絡をするのも一苦労になるからです。
持分を取得した第三者はもちろん魂胆があります。
安く完全所有権を手に入れることを狙っているのです。
持分が第三者に渡った時点で負けゲームと理解して下さい。
相手は恐らくプロです。
素人さんの相手はお手のもの。
赤子の手をひねるごとく容易です。
最後は安く買い取られて終わるのです。
ここまで共有名義の権利の制限とリスクを説明してきました。
では共有名義のリスクを回避し、物件価格と同等額で売却するためには一体どうしたらいいのでしょうか?
簡単ではないかも知れませんが早々に共有者全員で話し合い、持分を同時に第三者に売却(物件として売却)することに尽きます。
これができれば足元を見られることなく、完全所有権として最も高値で売却できます。
あなたが現金化したい、と考えても他の共有者が別に売りたくない、となればあなたの持分は上述の通り安く買いたたかれてしまうのです。
共有者の状況は三者三様です。
さらに状況は刻刻と変化します。
今は共有者が精神的にも肉体的にも経済的にもなんら問題がいかもしれませんが、いつ変化するか分かりません。
共有状態の解消は早いに越したことはないのです。
共有状態を維持して得をするのは第三者だけなのですから。
今回はいかがだったでしょうか?
目から鱗が落ちた方も少なくはなかったのではないでしょうか?
共有名義がこんなにリスクの塊だったと理解していたでしょうか?
高値売却には買主の視点が必要不可欠です。
上記を踏まえ、弊社ではあなたの共有名義を解消すべく、戦略を立案しますので、お気軽にお問い合わせください。
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