ビル売却の注意点 ~相場の調べ方~

ビルオーナーにとって、所有しているビルをいざ売却しよう、となっても一体いくらで売れるのか、相場の把握は大変に困難です。これは不動産会社も大して変わりません。なぜならマンションなどの住宅と違い、取引されている事例が極端に少ないからです。不動産会社の情報ソースは一般人よりは多いですが、そもそもの取引事例が少ないので情報ソースの多寡はそれほど影響しないのです。それよりも不動産会社の強みは買主候補と直接コンタクトできることです。今回は難しいといわれる、ビルを売却するときの相場についてのコラムです。


ビル売却時の相場の調べ方 その1 概要

ビル売却時の相場の調べ方 その1 概要①

ビルの老朽化、空室率の上昇、家賃滞納、相続などを原因として、あなたはいよいよビルの売却を検討しはじめました。
しかし、すぐに躓きます。
一体いくらで売れるかが皆目見当がつかないからです。
リテラシーの高い方は一生懸命ネットサーフィンをします。
それらしいサイトや同じようなビルが売られている情報を得ることに成功しますが、いまいちしっくりきません。
当たり前です。
ビルは住宅と違って個別性が大変高いのです。
住宅は多少の差はあれど、同じような構造や仕様になっているため比較が容易ですが、ビルは構造や仕様が建物によって全く異なるため、比較が大変に困難なのです。
例え隣のビルが売買されたから、といってその取引事例をそのまま当てはめることはできないのです。
築年数、構造、設備、維持修繕状況、テナントミックス、天井高、間取、エレベーターの有無など、要因を挙げればまさに枚挙にいとまがないのです。
さらには買主が自社ビル(実需)として探しているのか、投資(収益物件)として探しているのかにもよっても売買価格が大きく変わってきます。
不動産会社が査定をする際には、「取引事例比較法」といって、あなたの所有するビルに類似するビルの直近の取引事例を探しますが、これがそうそう見つからないのです。
規模、構造、築年数、立地など、主な要素の一つ二つが重なるビルを見つけられればラッキーです。
このような理由から、よくて追い風参考、といった取引事例しか見つからないのです。
では、どのようにすればあなたの所有するビルの相場がわかるのでしょうか。

ビル売却時の相場の調べ方 その1 概要②

いくつかある評価方法のなかでも最も正確性が高く、わかり易いのが「収益還元法」です。
前述の「取引事例比較法」の弱点である、取引事例がない場合に大きな効力を発揮するからです。
収益還元法はあなたが所有するビルを収益物件として投資を目的とする前提で評価します。
でも自分のビルは自社で使ってるから関係ないなあ~、と考えたあなた!ちょっと待って下さい。
収益還元法は不動産の中では珍しい、理詰めの評価方法なんです!
あなたのビルが収益物件でなくても、収益物件として評価したらどうなるか?を把握することはとても重要なのです。
この評価方法の変数はシンプルです。
①利回り、②賃料収入の2点だけだからです。
詳細は後述します。次にある程度の正確性をもって評価できるのが「積算法」です。
これもシンプルに、①土地価格、②建物価格(現在価値)の2点を合算した評価になるため、「取引事例比較法」のように事例がないので評価できない、という状況が発生しにくいです。
少なくとも東京などの都心部においては、あなたが所有するビルの周辺にはマンション、戸建て、ビルなどの建物があるはずですので、ある程度の確からしさをもって評価することは可能です。

ビル売却時の相場の調べ方 その2 「収益還元法」

ビル売却時の相場の調べ方 その2 「収益還元法」① 利回り

さあ、お待たせしました。
あなたが待ちに待った収益還元法を説明していきます。
まずはよだれをふいてください。
前述のとおり、この評価方法の変数はシンプルです。
①利回り、②賃料収入の2点だけだからです。

あなたのビルの価格 = ②賃料収入(年額) ÷ ①利回り 

では、この2点は一般の方でも容易に調べることができるのでしょうか?
答えは、イエス!とはいえません。
これは不動産業界の問題点でもあるのですが、情報を積極的に開示しません。
住居系の不動産と異なり、ビルのような事業用不動産の賃料は情報としては出回らないからです。
がっかりしてしまったあなた、安心して下さい。
調べる方法はあります。
まずは①利回りからです。
まず、利回りとは変動するもの、いうことを理解してください。
その時の景気、経済状況で変わってくるのです。
10年前にビルの利回りが10%だっとしても、昨今はまともな物件であればいいとこ5%です。
ここに問題、というか一般の方が相場利回りを把握し難い理由があります。
この利回りは、例えば、神田にある中規模オフィスビルなら5%、というように投資家の間ではコンセンサスが形成されていますが、投資家でないあなたには得られない相場観です。
では何をみれば相場観が把握できるのでしょうか?
まずはREITという上場不動産投資信託があり、これらは上場しているために、ご丁寧に事細かく情報を開示しているので要チェックです。
各REITのホームページをみれば、直近で購入した物件の利回りが記載されています。
これをみれば現状の相場観が把握できますが注意が必要です。
このREITは世界一不動産を高く買う投資家の一人であり、購入する物件も大規模なものが多いので、同じ水準の利回りであなたのビルが売れる!とガッツポーズはしないでください。
あくまで、これらの利回りは最高値である、と理解して下さい。
現実的には、「楽待」や「健美家」などの不動産サイトをみれば売り出し中の小規模ビルが多く掲載されているので、参考にして下さい。
このようなサイトをチェックすることで、あなたのビルがどの程度の利回りで売れるかの感覚をつかむことができます。

ビル売却時の相場の調べ方 その2 「収益還元法」① 賃料収入

賃料はどのようにしたらわかるのでしょうか。
これはネットである程度調べられます。
オフィスや店舗の賃貸サイトで募集している、あなたのビルがあるエリアで同じような条件、区画を探せばいいだけです。
簡単ですよね?
ただし、注意が必要です。
一般の方はネットに掲載されている募集事例をみることはできますが、実際に契約された条件である成約事例をみることができません。
居住用物件の募集賃料とは大きく異なり、事業用ビルの募集賃料と成約賃料には乖離が生じるのが一般的です。
なぜならばネゴが入ることが普通だからです。
例えば1室月額賃料20万円で募集していても、実際は月額15万円で契約した、なんてことも往々にして発生するからです。
ですのでネットの募集賃料も、あくまで参考としてみましょう。
また、万一あなたのビルの賃料が現状の類似物件の募集賃料よりも高い場合にも注意が必要です。
この場合は賃借人(テナント)が昔から入居しているなどの特殊事情で相場賃料よりも高く貸せているだけであり、現テナントが退去して新しいテナントが入居する場合は相場賃料に収斂するからです。
買主である投資家は収斂後の相場賃料で評価するため、現行賃料が高いから高く売れるだろうと考えるのは拙速です。
最後に稼働率についても注意が必要です。
投資家が想定する「賃料収入」とは、満室想定賃料に一定の空室率をかけて算出します。
この空室率はビルの規模、立地、築年数、設定賃料など、競争力の強弱を基に設定しますが、5~8%とすることが一般的です。
あなたが投資家として新しくビルを購入する立場で考えれば明白ですが、未来永劫テナントが抜けず、常に満室経営!などという楽観シナリオは描きませんよね?

ビル売却時の相場の調べ方 その3 「積算法」

今回のコラムは少し読み応えがあり、お疲れかもしれませんが、これで最後ですので、もう少し頑張りましょう。
最後は「積算法」という評価方法を説明します。
これも大変シンプルなのですが、難点は相場と乖離することが多々ある、ということです。
積算法は、①土地価格、②建物価格をそれぞれ算出し、合算した金額をその物件の評価額とします。
①土地価格に関しては、現実的な価格を比較的容易に算出できます。
東京などの都心部であれば、周辺の土地の取引事例は比較的あるからです。
ではなぜ相場と乖離するのでしょうか?建物の評価は画一的にできないからなのです。
税務上の耐用年数は、構造や用途にもよりますが、ビルであれば34~50年です。
では現実的にこの耐用年数を経過した建物は0円で取引されるのでしょうか?
そんなことはありませんよね。
築年数が経過していても、メンテナンスが十分になされていれば相応の価値ありとして評価されますが、一方であちこちが不具合だらけで多額の修繕費用が必要な場合、評価はマイナスになる可能性もあるのです。
また、買主の考える用途によっても、全く一致しない構造や仕様になっているビルであれば0評価になってしまうことも注意が必要です。
このように土地と違って建物の評価は変数が多いのです。

今回はいかがだったでしょうか?
上記より、ビルを売却する際の相場の把握は簡単にはできませんが、労を惜しまずに情報を収集することで、ある程度の目安を知ることは可能です。
とはいえ、お忙しい方や、情報収集したところで精度も低いから、骨折り損のくたびれ儲けになりかねなしなあ、といった声も聞こえてきそうです。
弊社では上記根拠に基づき、あなたのビルの売れそうな価格レンジをお伝えすることができますので、お気軽にお問い合わせください。

シン不動産DX株式会社の自社ビル・一棟ビル売却について

シン不動産DX株式会社は自社ビル・一棟ビルの売却をサポートする不動産会社です。
「築年数が経ってなかなか売れない」「空室が多くて売りにくい」などのビル売却のお悩みに専門スタッフが最適なご提案をします

Follow me!

投稿者プロフィール

tomita